年間100万食以上。多くのお客様に食され、現在では店舗外でも物産展やWebなどでも多くの注文を頂けるようになったやまなか家の冷麺。そこには一人の商品開発の飽くなき情熱・探究心がありました。冷麺の誕生秘話、おいしさの秘密についてご紹介します。
「冷麺をどうにかしてくれ」。商品開発を務める奥間康史のもとに社長(現会長)から依頼があったのは1990年のこと。「くどい」「甘ったるい」「スープが濁ってる」 …当時の冷麺は現在とは程遠く、お世辞にも美味しいと言えるものではありませんでした。奥間は沖縄出身で盛岡冷麺については詳しくありませんでしたが、社長の熱意に心打たれ、「どうしたらもっと美味しくできるのか」足を棒にして、盛岡中の冷麺を食べ歩きました。ダシは鳥・豚・牛の何がいいのか、分量はどれくらいならいいのか。麺についても水と粉の配合を変えてみたり、茹でる火加減を調整したり、試行錯誤を繰り返しました。やまなか家の冷麺はある時、突然、美味しくなったわけではありません。作っては食べ、作っては食べ、奥間がそれを繰り返した数だけ、徐々に改善していったのです。
やまなか家の冷麺の美味しさは、材料・レシピはもちろん、その作り方にも秘訣があります。お店ごとに澱粉と小麦粉から生地を練って、注文が入ってから切って・茹でる、つまり全て「お店で手作り」しているのです。確かにセントラルキッチンで全ての下処理を行う方が効率はいいかもしれませんが、冷麺は“生き物”です。その日その日の天候・気温・湿度によって、粉や水の最適な分量、茹で時間も異なってきます。細かいことを言えば、季節ごとのジャガ芋の出来によって粉の配合も変わってきます。やまなか家の冷麺の変わらぬ美味しさは、店舗ごとの愚直な手作業によって守られているのです。
やまなか家では冷麺に限らず、これまでに数多くの商品開発に取り組んできました。カルビクッパのご飯の代わりに冷麺の麺を入れる「温めん」、カルビを煮込んだ塩スープに冷麺の麺を入れる「塩温めん」 etc.ボツになったものを含めればアイデアは数えきれません。中には「 10人に1人喜んでもらえればいい」という発想で生み出された商品もあります。それは各テーブルに置かれてある「激辛旨ダレ」。奥間がタイ料理のタマリンドにアイデアを得て、4種類の唐辛子をミックスして作ったものです。辛いもの好きの韓国の方にも評判で過去に「これ売って」と言われたこともあるほど。現在、商品開発担当は奥間から次の世代へとバトンタッチしましたが、今後ともチャレンジ精神を受け継ぎ、小手先の商品開発ではなく「他では味わえない」「さすがやまなか家」と言ってもらえるように努力を続けていきます。